近未来となりつつある自動運転技術。世界と日本では自動運転レベルに違いがある

自動車の自動運転技術が進歩しつつあり、完全自動運転の実現も決して夢ではありません。もしも人間がまったく運転する必要がなくなれば、社会に大きな変化が生じて日々の生活を取り巻く環境が変わることが予想されます。

そんな自動運転技術の魅力を紹介しつつ、世界各国で設定されているレベルについても触れていきます。

自動運転の最前線

国内外の多くの自動車メーカーでは自動運転の実用化に向けて開発競争を繰り広げているものの、実用化に向けて課題がないわけではありません。

2020年現在の自動運転レベル、さらには日本と世界の自動運転レベルや今後の展望について詳しく紹介していきます。

自動運転レベルは5段階ある

自動運転の開発段階の基準となるのが、米自動車技術者協会が定めた5段階のレベルとなります。日米欧では5段階レベルに準拠し、自動運転システムを開発が行われています。

  • レベル1は運転の責任主体はドライバーで、ハンドル操作や減加速のいずれかを自動運転システムが走行環境に応じてサポートするものです。
  • レベル2も同様に運転の責任主体はドライバーで、ハンドル操作や減加速の両方を自動運転システムが走行環境に応じてサポートするものです。
  • レベル3は高速道路や制限速度内などで自動運転システムがすべての運転を実施し、システムの要求に応じてドライバーが運転操作に戻るもので、運転の責任主体はドライバーにあります。
  • レベル4は運転の責任主体はシステムにあり、すべての領域及び条件下において自動運転システムがすべての運転を実施します。
  • レベル5はすべての領域及び条件下で自動運転システムがすべての運転を実施し、運転の責任主体はシステムにあります。

2つの社会的影響をクリアできるか

自動運転システムによって人間が運転する必要がなくなった場合、経済的にも社会的にも大きな変化が起きると予想されます。良い面ばかりがピックアップされがちであるものの、大きく2つの問題が浮上します。

まずトラックの運転手やタクシー運転手などの職業ドライバーの大量失業です。職業ドライバーは不必要とはなるため、自動運転システムがどの程度利用されるのかは今後の議論の対象になることが予想されています。

さらに自動運転コストがどれぐらいかかるのかといった部分も加味し、失業者増加への影響を考える必要があります。そして自動運転システムの利用によって、経済活動や住居の地域分布が今現在とは異なるものとなって、地価に影響を及ぼすでしょう。

技術的な観点だけではなく、経済的にも社会的にも影響を及ぼすことによって、失業者も増加するものです。日本のみならず他国においても自動化の流れは進んでおり、不要となった仕事は少なくありません。

しかし経済成長が続いていた影響もあって、新しい職に就くことができました。不景気が大きな問題になっている低成長経済においては、失業の問題をクリアするのは簡単ではないです。

自動運転システムを導入する必要は強い

労働者視点では自動運転システムを導入することで失業する恐れもあって、手放しに喜べるというわけではありません。しかし事業体としては人件費の節約や労働問題が発生せず、事業効率を上げるために是非とも導入して欲しいと考えるものです。

さらに自動運転システムを導入することで、自分で車の運転ができない高齢者の移動もスムーズに行えるようになります。長期的に考えると自動運転システムを導入するメリットは大きいです。地域間格差が是正されるとともに、過疎地での買い物問題の解決の糸口にもなっていくでしょう。

日本の自動運転レベルについて

部分運転自動化に対応した自動運転レベル2までは、車載の運転支援システムとして市販化がされています。トヨタ自動車の「トヨタ・セーフティセンス」やホンダの「ホンダ・センシング」などが該当します。

自動運転レベル3に関しては2017年に独アウディが該当する乗用車を発表まではしたものの、一般車が公道を走るためには交通ルールの整備や新しい法規制が必要となるのが問題となって、市販化にはいたっていません。

しかし2020年4月1日に日本で自動運転レベル3が解禁となり、販車の走行が認められることになりました。国内メーカーのホンダが自動運転レベル3対応の乗用車を販売することを発表し、今後各自動車メーカーで開発競争が一気に加速することが予想されています。

責任所在のあり方が課題

自動運転レベル3では運転の責任主体はドライバーにあり、システムの要求に応じてドライバーに運転操作が戻るものです。課題となるのは責任の所在のあり方やドライバーのモラルハザードとなります。

アメリカでの過去の事例においては事故当時に部分的な自動運転機能が作動し、自動運転システムがドライバーに運転操作を行うよう警告していたものの、システムに残されたデータでは死亡したドライバーがハンドルを握っていないことが後に分かりました。

自動運転システムの不備が原因であるのか、ドライバーの対応ミスが原因であるのか答えを示す根拠が曖昧であるのが課題となっています。完全自動運転に向けた過渡期を迎えている今、実用化していくためには責任の所在のあり方については避けては通れません。

安全性担保が絶対条件

これから日本で自動運転システムが搭載した車が公道を当たり前のように走るとなると、安全性担保が絶対条件となります。しかし複雑な走行環境に対して、車のみで安全性を担保するのは難しいといわれています。

走行する天候や時間を限定したり、走行速度を低速に抑えたりといった走行環境条件をあらかじめ設定し、その条件の範囲のみで自動運転を認めるのなら安全性の担保ができるでしょう。

関係省庁が主導となって都度条件を確認して安全性を担保できるのかを、技術の進展に柔軟に対応していかないといけません。いかに安全を確保する仕組みを構築するかが課題になっています。

求められる安全水準の基準

合理的に予見される防止可能な事故が生じないことが自動運転システムで求められる安全水準の基準となります。高い目標が掲げられているものの、現実的には難しいのが現状です。

人間が自動車を運転して多数の事故が発生している現状から考えて、いきなり事故が0となるのは現実的には難しく、いかに自動運転システムを導入して早期普及を図るのが重要と考えられています。

道路運送車両法の改正も必要となり、自動運転システムを導入するための基準はまだ確定していません。安全性を担保しつつ、失業者を必要以上に増やさないためにはどうするべきかといった点が課題です。

世界の自動運転レベルについて

日本では2020年にレベル3を目標に市場投入することを発表し、2021年の動向に要注目です。世界に目を向けるとフォルクスワーゲングループのアウディは2017年にレベル3搭載の量販車を発表しました。

さらにドイツのBMWではレベル3搭載の量販車を2021年に量産化を開始すると発表しました。手動運転モードと高度な自動運転を可能にするモードを搭載し、レベル4を想定した仕様となっています。

ドイツのダイムラーでは条件付きで自動モードで運転できる新しいオプションシステムを使用することを見込んでいます。ドイツのフォルクスワーゲンでは米フォードと提携してレベル4技術の開発を進めており、2022年に自動運転を搭載した配車サービスを開始することも計画しています。

最初のモデルは2020~2021年に発売される予定であり、レベル3やレベル4を実装する可能性が高いです。日本と同レベルと走行環境が整っている韓国ではレベル3の実装に注力しており、2021年にレベル3の量販車を販売することを計画しています。

中国ではすでにレベル4タクシーの実証が盛んで、2021年にレベル3相当の量産モデルを中国内で販売すると発表されており、長安汽車も2020年内にレベル3の量産体制が進むと報じられています。

世界的にレベル3の解禁されている

日本ではホンダをはじめとして積極的に自動運転システムを導入しようとする動きはあるものの、まだ少数派であるのが事実です。しかし世界に目を向けるとすでにレベル3の実装に注力している国も少なくなく、国を挙げて社会受容性を高めようとする動きがあります。

レベル3が拡大することで、高度なレベル4へと進化を遂げることになるものでしょう。まずは比較的安全な領域で実績を重ねていくのが重要と考えるのは世界共通の認識です。だからこそレベル3が拡大して実用域に達することで、今後の需要が伸びると考えています。

コロナ禍による減収の影響

世界ではコロナ禍による減収が続いており、今後中長期的に続く可能性もないわけではありません。短期的な減収であるのならまだしも、いつコロナ渦が収束するかは誰にも予想はできません。

レベル3への投資をしたとしてもすぐに利益を得られるというわけではなく、あくまでも未来に向けて実績を重ねていく段階です。すぐに利益に直結するとは言い難い状況であるからこそ、レベル3への投資を控えるといった決断をするメーカーもあってもおかしくはありません。

レベル3が拡大していくためには世界経済の早期回復が必要となります。

2020年~2021年段階で自動運転システムを導入できるのか

日本を含む世界では自動運転システムを導入するのに注力しているものの、現実的に問題は山積みです。ドライバーに運転を要請する場面が極限少なくならないと、高度なレベル4へと進化を遂げるのは難しいです。

当然ながら段階を踏んで実用化を目指す必要があり、技術的ハードルはもとより社会受容性の面においての問題あります。さらに各自動車メーカーにとってまだ利益を得られる場面は限られており、将来に向けた投資が回収できるのはレベル4以上に拡大した場合といえます。

レベル3ではまだ需要が伸びていくとは考えるのは難しく、実用粋に達するかどうかが重要となるものです。

客観的データを積み重ねていく必要がある

日本が世界と同じく自動運転システムを導入するとなると、客観的データを積み重ねていく必要があります。各自動車メーカーはそれぞれで実験データを持っているものの、ビジネスであるからこそそのまま出すことは考えにくいです。

議論のたたき台となる客観的なデータを積み重ね、外国との標準化の議論を進めていかないといけません。自動車メーカーと大学が連携して客観的なデータを積み重ねる動きも活発です。

目指さないといけないのは国際基準

自動運転システムを導入していくにあたって目指すべきは国際基準です。自動車メーカーごとに通信やデータの規格が異なるとなると、事故につながる可能性も高まります。

規格の標準化をしていくとともに、車両の位置や道路状況といった情報を効率的にやり取りもしていかないといけません。そしてもしも事故が起こった場合の責任や保障についての法改正をしていき、社会全体で自動運転車を受け入れていくかどうかの問題もあります。

各自動車メーカー同士での競争はあるものの、世界の標準化をリードしたい考えは同じです。

日本ではレベル5の実用化は2025年

2020年~2021年段階でレベル3の導入自体は可能であるものの、日本ではレベル5の実用化は2025年という方針を打ち出しています。しかしあくまでも高速道路での話であり、一般道路での実用化については策定されていません。

欧州や中国では2030年代には完全自動運転が標準となる社会を目指しています。日本でもトヨタは2020年代前半〜半ばに一般の公道での完全自動運転の実用化を目指しているのを発表しています。

完全自動運転の実用化への課題となるのは事故での責任の所在で、レコーダー搭載の義務化や従来の運転免許制度の改変が必要になるといわれています。

自動運転車同士での状況共有をしていく仕組みの確立も必要で、専用の基地局やアンテナの設置の推進も必要になる可能性が高いです。インフラの整備や国際的なルール作りにおいても必要であり、すぐにレベル5が実用化されるのは難しいといえる理由となります。

まとめ

自動運転の実用化は世界各国で進んではいるものの、すぐ公道で実用化されることはありません。責任の所在のあり方や失業者増加をどう防ぐのか、さらには保障についての法改正が行われないと自動運転の実用化は難しいです。

完全自動運転が標準となる社会になることで、事故の件数が少なくなって人手不足が解消されたりとさまざまなメリットはあるものの、世界各国ですべての問題をクリアしないといけません。