自動運転の実現で社会はこれだけ変わる。激変する8の産業・業界を解説

100年に一度と言われる自動車産業の変革期において、自動車メーカーだけではなく、世界のIT企業を巻き込んで激しい開発競争にある自動運転。そんな自動運転が実現すると、一体どんな社会が実現されるのでしょうか。

自動運転の実現は単に車を運転する必要が無くなるだけではなく、そこに新たな価値やサービスを見出す業界や産業があり、影響はかなり多方面に及ぶと考えられています。

そこで今回は自動運転によって大きく変化しそうな産業・業界、新たに生み出されるであろうサービスを紹介していきます。

自動運転で変わる社会「激変する業界・産業 8選」

メディア業界

新聞、雑誌などの紙媒体からラジオ、テレビなどのデジタルメディア、そして最近発展が著しいインターネットメディアまで様々な媒体が存在するメディア業界。そんなメディア業界は自動車関連市場を新たな市場開拓の地として注目しています。

現在、通勤や移動に車を利用している人は1日のうち合計で数時間を車内で過ごしていますが,、運転中はほとんど自由がありません。しかし、レベル4以上の自動運転が実現するとこの移動時間が自由な時間となるため、広告の配信を含む様々な車内向けコンテンツ・サービが生まれると期待されていています。

たとえば、

  • フロントガラスを活用した大画面のコンテンツ
  • 車内の360度に映像を投影した臨場感たっぷりの映画館のような体験ができるサービス
  • さらに車の位置情報と連動して「移動」という要素を取り入れたコンテンツやゲーム

などが提供されると考えられています。

こういったサービスの実現は自動運転だけでなく、「5G」などの通信技術の進化によってもたらされます。5Gが普及すると、高度な通信機能を備えた自動運転車が登場し、移動しながらでも大容量で遅延の無いリッチなコンテンツを楽しめるようになります。

すでにソフトウェア開発企業の「ACCESS」は車内向けコンテンツサービス「ACCESS Twine for Car 2.0」を発表しており、各OEMメーカー向けに提供しています。

これは車載インフォテインメント・プラットフォームとコンテンツストリーミング・サービスを組み合わせたもので、車載向けの電子番組や駐車場の支払い支援機能、駐車場や商業施設、イベントなどの情報を提供する機能などが搭載されています。

参考記事:次世代通信5Gは生活になにをもたらすか

金融業界

PayPayやLINE Payで話題になっているように現在の金融業界にはキャッシュレスの波が押し寄せています。そして、自動車業界もこのキャッシュレスの波に乗ろうとしています。

現在のところ範囲は限定的ですが、タクシーや配車サービスなどにおいてキャッシュレス化が進んでいます。

こうした流れに沿って、トヨタグループはキャッシュレス決済サービスの導入に向けて取り組みを進めています。2018年10月に金融事業を手がけているトヨタファイナンスはQR・バーコード決済サービスを行う企業「Origami」と提携を発表して、2019年度中にスマホのキャッシュレスサービスを提供すると発表しました。

トヨタが現在を自動車業界における

「100年に一度の変革期」

と捉えて自動車メーカーからMaaS企業への変革を行っている中で、Origamiと組むことにより、キャッシュレス決済を導入するのは自然な流れと言えるでしょう。

自動運転や高度な通信機能を備えたコネクテッドカーが普及すると、様々な車内向けコンテンツやサービスが生まれます。そうなると車内での決済機会が増加するため、既存のキャッシュレス決済サービスだけではなく、トヨタのように自動車メーカー自らキャッシュレス決済サービスを提供していくことが当たり前になるかもしれません。

参考記事:未来の移動に革命をもたらす!?MaaSとは

ソフトウェア産業

自動運転の実現により大きく成長するのがソフトウェア産業です。自動運転は

・カメラー、LiDAR(ライダー)などのセンサー 
・CPU・GPU、AI(人工知能)などのソフトウェア

を駆使して周囲の状況を検知・解析して車を制御することで実現されます。

ここで最も重要になってくるのがソフトウェアによる制御です。これまで人間のドライバーが行っていた車の制御に関するすべての動作をソフトウェアが担うことになります。

現在の自動車もソフトウェアによる電子制御化が進んでいますが、自動運転となるとソフトウェアが担う数は比べ物にならないほど膨大になります。そのため、ソフトウェア開発に関する需要が急増すると見込まれたいるのです。

日本のエネルギーや産業技術開発を担う国立研究開発法人であるNEDOが2016年に発表した資料によると、組み込みソフトウェア関連製品の市場規模は第4次産業革命のもと増加しており、世界市場規模は

2014年の1兆1352億円から2030年には1兆9903億円に達する

と予測されています。そして、分野別に見た時に最も高い割合を占めているのが車載分野なのです。車載分野の市場規模は

2014年の4613億円から、2030年には8088億円

まで伸びると予測されています。

さらに自動車におけるソフトウェア中心の流れを表すデータとして、2019年3月に帝国データバンクが発表した「トヨタ自動車グループ」下請企業調査があります。

この調査では一次下請け・二次下請けともに非製造業部門である「受託開発ソフトウェア」が初めて業種別企業数で最多となりました。今後は自動運転の発展と共にこのソフトウェア中心の傾向はさらに強まっていくでしょう。

参考記事:[知っておくべき]IoT時代の必須技術、エッジコンピューティングとは?

タクシー・バス業界

自動車によるサービスの代表例であるタクシー・バスはそのほとんどが自動運転に変わる可能性があるため、最も強く影響を受ける業界になります。

今、世界各国の自動車メーカーやIT企業、スタートアップ’がこぞって自動運転タクシーや自動運転による配車サービスを開発しています。

日本の企業であればDeNAと日産が自由な移動をコンセプトに掲げる「Easy Ride」を共同開発しており、2020年度中のサービス開始を目指しています。さらにZMPと日の丸交通は2018年の8月27日から9月8日に有料方式としては世界初となる自動運転タクシーの営業実験を行いました。

どちらのサービスもスマホのアプリから予約や配車、支払いができるようになっています。

さらに世界に目を向けると、GoogleのWaymoが2018年12月5日に、アメリカアリゾナ州にて自動運転タクシーの世界初となる商用サービスー「ウェイモワン」を開始しています。自動運転レベルとしてはドライバーの搭乗が必要ないレベル4が実現されていますが、現在のところ安全のためにドライバーが同乗しながらのサービスとなっています。

他にも

  • 米テスラモーターズ
  • GM(ゼネラル・モーターズ)の自動運転車開発部門Cruise Automation(クルーズオートメーション)
  • タクシー向けの自動運転事業を手がけるスタートアップ「Zoox」

などが2020年度までの自動運転タクシーのサービス開始に向けて開発を進めています。

このような流れの中で、Uberのようなライドシェアサービス企業も自動運転を開発していて、将来的に自動運転が実現するとタクシーとライドシェアサービスの違いがほとんど無くなるため、「自動運転による配車サービス」として1つに統合されていくと考えられています。

小売・飲食業界

最近では、「Amazon Go」のような無人店舗のスーパーが出現したり、ローソンが無人コンビニの実証実験を開始するなど、小売業界における無人化が進みつつあります。このような無人のコンビニ・店舗と自動運転の技術は非常に相性の良い組み合わせであり無人の移動型店舗により、曜日や時間帯に合わせて需要の高い場所に移動しながら販売効率を高めることが実現できます。

無人移動店舗のよううな自動運転の活用を実現するために、トヨタの「e-Palette(イーパレット)」に代表されるように各社から、MaaS事業向けの多目的EV自動運転車のコンセプトが発表されています。

トヨタはe-Paletteの活用法として移動式のコンビニを想定しており、ヤマトホールディングスやセブンイレブンジャパンと協議を進めています。

そして飲食業界において自動運転の活用が進むと考えられているのがデリバリーサービスです。

外食・中食市場について調査分析を行っているエヌピーディー・ジャパン株式会社の調査によると、レストラン(小売店、自販機、社員食堂、学生食堂を除く。宅配ピザを含む)におけるデリバリー市場規模は、2018年で4,084億円となり、前年と比べて5.9%の増加となっています。

このように市場規模が年々増加傾向にある中、労働力不足で配達員が足りていないという状況の企業も多く、無人の自動運転車による配達を導入する企業は多いと考えられます。

自動車保険業界

ドライバーがいない自動運転では事故の際の責任の所在が現在と異なり、そもそも事故の発生件数が激減すると考えられているため自動車保険の内容も大きく変わると見られていいます。

事故の原因がソフトウェアの欠陥なのか、システムの故障なのか、所有者の管理不正なのかなど様々な状況に応じて責任の所在は変わり、それに対応した新たな形の自動車保険が必要になります。また料金も事故の発生件数が激減するので現在よりも安い料金体系になると考えられています。

実際に損保大手の三井住友海上は

  • 「CASE」「MaaS」に代表される自動車産業の変化への対応
  • ビッグデータの分析・活用

を目的とし、2つの部署を新設すると発表しています。

*「CASE」は

「Connected(つながる)」 
「Autonomous(自動化)」
「Shared/Service(シェアリング/サービス)」
「Electric(電動化)」

の4つの単語から頭文字を取ったもので、MaaSと並び未来の自動車業界を表す言葉として使用されています。

自動車修理業界

自動車修理業界に起きるは機械中心から、ソフトウェア中心の修理への変化です。

ソフトウェア産業でも述べたよに、自動運転車ではソフトウェアの重要性が非常に高まります。そのため自動車修理においてもこれまでの部品などを中心とするものからソフトウェアの修理・改善を中心とする自動車修理に変わっていくでしょう。

これまで通り、機械を修理する整備士の仕事はなくなりませんが、確実にコンピューターを用いたソフトウェアの診断・解析・修復などの比重が高まっていきます。それに伴い整備士に必要とされる技術も変わり、新たな資格が作られたり、求められる人材が多角化していくでしょう。

さらに、インターネットを利用した遠隔での自動車診断やソフトウェアのアップデートによる性能の向上など自動車修理業界に新たなサービスが生まれる可能性もあります。

警察・警備業界

自動運転の実現を前に警視庁は道路交通法の改正に力を入れていますが、自動運転が実現すると無人パトカーによる巡回・警備が行なわれるようになり、警察業務の内容そのものが大きく変わると考えられています。

すでにオランダ警察はトヨタやアウディ、テスラなどと協業して自動運転と遠隔操作で巡回・警備を行い、犯人の逮捕に繋げる取り組みを進めています。またドバイ警察もAIの自動運転による「動く無人交番」を発表しています。これには交通違反の罰金を決済するための機能を含めた16のスマートサービスや偵察用ドローンも搭載されているのです。

無人パトカーによる巡回・警備はこれまでは難しかった

  • 24時間のパトロール
  • 移動しながらの交通違反取締り
  • 360度の同時監視

などを実現し、各種交通違反や犯罪の抑止力として大きな効果を上げるでしょう。

さらに自動運転によりそもそも交通違反や事故が激減するため、警察内部の業務にも大きな変化が起きることになりそうです。

自動運転で想像を超えた変化が社会に起こる

自動運転の実現は「100年に一度の変革期」と言われるぐらい、社会に大きな影響を与える可能性を秘めた技術になります。もちろん今回紹介した以外にも宅配業界や建設業界など様々な産業・業界にも変化が起きるはずです。そして現在では想像もつかない変化が起きるかもしれません。

実際に完全自動運転が実現し普及するのはまだまだ先の話ですが、「100年に一度の変革期」に備えて今から準備しておくことが大切です。


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